滅菌と洗浄:再生処理

再生処理の現場で働くみんなを応援します。

乾燥:再生処理③

再生処理の中で、乾燥もとても重要です。洗浄・消毒後は乾燥機を使って素早く完璧に乾かす必要があります。

乾燥が重要な理由

  1. 水分に触れていると器具が錆びる
  2. 空気中の雑菌が水分に集まって増殖する(再汚染)
  3. 濡れていると滅菌や消毒の妨げになる

医療器具はステンレス製が多いです。ステンレスは錆びにくいとされていますが、まったく錆びないわけではありません。

ステンレス以外の金属が混ざっていると、錆びやすくなります。

歯科用のスチールバー(歯を削る器具の先端)などは、乾燥機の中でも錆てしまいます。

せっかくキレイに洗った器具を自然乾燥で放置すると、雑菌が繁殖して再汚染されてしまいます。この雑菌は、目に見えません。触ってもわかりません。

わたしたちがターゲットにしている汚れは、目に見えないミクロの世界の汚れです。

手で拭くことの問題

再生処理の工程で、針刺しなどの事故が多い作業は、水分を拭き取ることです。タオルなどを使ってお茶わんを拭くように器具を拭くと、鋭利(えいり:とがった)な器具が刺さってしまいます。

また、タオル類のリント(細かな繊維、糸くず)は、器具に付着すると異物として人に害を与えたり、小型の滅菌器に詰まって故障の原因になります。

このような問題を解決するために、エアーガン(エアーフィルター付)を使って水分を吹き飛ばします。短時間でざっくりと水分を除去できるので、素早く乾燥機に入れることができます。

医療機器の洗浄・乾燥 | 株式会社 キッツマイクロフィルター | NAGANOものづくり 諏訪圏企業ガイド

乾燥機の使用

再生処理の工程で、乾燥機はエアーガンとともに必須の設備です。短時間で器具の内部まで完璧に乾燥させるには、乾燥機が最適です。

温度設定ができるので、100℃以下で乾燥します。滅菌温度(134℃または121℃)を超えると、器具にダメージを与えるので気を付けましょう。

プラスチック製品など、長時間高温にさらすと劣化する器具は、60℃以下の低温で乾燥します。

WDにはすすぎ後に乾燥するプログラムがあります。建物の外部に直接排気するダクトがある場合は、十分な乾燥ができます。

廃棄ダクトに接続されていないWDでは、乾燥が不十分で終わる機種もあります。その場合は、WDから取り出して乾燥機に入れる必要があります。

滅菌では乾燥が重要

滅菌の際に乾燥が不十分だと、どのような問題が起こるのでしょう。

  1. 濡れた部分は水がバリアになって滅菌剤が器具に直接接触できない
  2. 濡れた部分は温度の上がり方が遅い

滅菌剤が器具の表面に直接接触することで滅菌が達成されます。水が邪魔をすると、濡れた部分は滅菌されない(滅菌不良)可能性があります。

また、濡れた部分は温度の上昇が遅れます。乾燥した器具は一定の時間で滅菌温度に達し、必要時間温度がキープされて滅菌できます。

ぬれた部分が滅菌温度に達する前にタイマーが作動し、必要な滅菌時間が足りない状態で滅菌の工程が終わってしまいます。

そうすると、濡れた部分は滅菌されない(滅菌不良)可能性があります。

自然乾燥では、錆びの発生や雑菌による再汚染が起きます。

外側を拭いただけの内部が濡れた状態で器具を滅菌器に入れると、滅菌不良の可能性が高くなります。

十分な乾燥は、とても重要な工程です。

薬液消毒でも乾燥が重要

消毒薬に浸漬する場合も、濡れた器具を入れるのは危険です。消毒薬の添付文書に乾燥させる必要性が明記されています。

器具の水分で消毒薬が薄められると、消毒効果に必要な濃度が足りなくなります。薄まって消毒効果のない薬液に器具を漬けても、消毒されません。

濡れた器具を消毒薬に入れてはいけないのです。